『ベルズ・アー・リンギング』
Palace Theatre


 リバイバル・ミュージカル作品の開幕が少ない今シーズンのブロードウェイで『ロッキー・ホラー・ショウ』に次ぐ再演作がこの『ベルズ・アー・リンギング』。 3月13日からのブロードウェイ上演に先立ち、コネチカット州のスタンフォードでトライアウト公演が行われた。

 このミュージカルはベティー・カムデンとアドルフ・グリーンのコンビがジュディー・ホリデイのために書いた作品で、ブロードウェイで初演されたのは1956年のことだ。 1956年といえばジュリー・アンドリュース主演の『マイ・フェア・レディ』やシャーリー・ヤマグチ(山口淑子=李香蘭)が出演した『シャングリラ』が上演された年でもある。 

 トニー賞ではエラ役のジュディー・ホリデイがジュリー・アンドリュースやエセル・マーマンをおさえ主演女優賞、そしてジェフ役を演じたシドニー・チャップリン(チャールズ・チャップリンの息子)が助演男優賞を受賞している。 またブロードウェイでの上演回数は924回とカムデン&グリーンの作品の中では最長ロングラン記録を持つ作品でもある。 

 1960年には映画化もされており、ブロードウェイで主演したジュディー・ホリデイが映画版でも同役を演じている。 日本では鳳蘭主演で上演されその時のタイトルは『ラブコール』だった。 

 舞台は1956年のニューヨーク。 電話応対代行会社スーザンサフォーンに勤めるオペレーターのエラは歯医者や役者志望者などの顧客と付き合っているが、彼女の本命は劇作家のジェフ。ある日彼女は自分の職業を隠して、ジェフと会う。相手がいつも電話で話している丁寧なオペレーターの女性とは気づかないジェフは彼女と恋に落ちる。 ところがエラはそんな二重生活に耐え切れず会社を辞めることを決意。 しかしそこへエラが電話のオペレーターと同一人物だということを知ったジェフがきて、お互いを再確認した二人は晴れて結ばれる。

 初演以来の上演となる今回のリバイバルで主役の座を射止めたのは『ガイズ・アンド・ドールズ』でトニー賞を受賞したベテランのフェイス・プリンス。 近年は『王様と私』のアンナ役、『リトル・ミー』のベル役、そして『ザ・デッド』のグレタ役などでブロードウェイの舞台に常時出演している。 そしてジェフ役には『ワイルド・パーティ』のマーク・クディッシュ。 他にも『美女と野獣』のオリジナル・キャストでミセス・ポット演じたベス・フォーラーなども出演しておりキャストは非常に豪華だ。

 エラ役のフェイス・プリンスは動きが少々鈍いが、カリスマ性があり安定した歌唱力でなかなかの好演だ。 相手役のマーク・クディッシュにしても同じことがいえる。 ただ両者とも個人の場面では良い演技をみせてくれるのだが、二人一緒の場面ではうまく息が合っていないようだった。

 振付けは『グリース』や『アニーよ銃を取れ』のジェフ・カルフーン。 これといった工夫のない振付けで、特にニ幕頭のダンス・ナンバー"Mu-Cha-Cha"では曲が長いせいもあってか退屈感を覚えた。 このナンバーは物語進行に一切関係なく、現時点での上演時間が3時間以上ということを考えれば、今後の手直しでまず必要なのはこの場面を短くすることのように思う。

 装置は『パレード』のリチャード・ヘルナンデス、そして衣装は『トミー』のデビット・ウーラード。 オーバーチュアでテレビ画面の形をした緞帳に物語の舞台となる1950年代の映像が映し出されるのが面白い。 また製作費が500万ドルと低予算なのだが、色鮮やかで無駄のない美術だ。 ただこれが逆に現代的すぎてしまい、開幕前の映像以外に劇中物語の年代を把握できないのが唯一の欠点といえる。

 一方この作品がブロードウェイ・デビューとなるティナ・ランドゥの演出はテンポがよく、作品の内容が理解しやすく非常に好感が持てた。 また曲では地下鉄の場面で歌われる"Hello, Hello There!"が今回のリバイバルではカットされていた。 因みにこのナンバーは映画版でも挿入されなかった。 そして映画化のために書かれ、初演時でのロングラン中に挿入された"It's Better Than A Dream"は今回歌われている。

  スタンフォードでの五日間のトライアウト公演の後もブロードウェイで約一ヶ月間のプレビュー期間がある。 4月12日に正式に開幕するまでにどれほどの手直しが加えられるのか今から楽しみだ。  

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