- DISNEY -
starring TONI BRAXTON
Palace Theatre
9月10日


 約3年ぶりにブロードウェイで『美女と野獣』を観劇した。 この前日からソウル・シンガーのトニー・ブラクストンがベル役で出演している舞台を観るのが今回の観劇の目的であった。 ついこの間もデブラ・ギブソンがベル役で出演していたのでスターがこの役を演じる事は珍しくはないのだが、トニー・ブラクストンの場合はわけが違う。 トニー・ブラクストンはここ数年のヒット・チャートに何度も登場している人気黒人シンガーで、デブラ・ギブソン以上に有名なのだ。 洋楽ファンなら誰でも知っているような大物である。 彼女のようなホットな人物がディズニー・ミュージカルに出演するのは非常に興味深い。 

 ロングランも5年目に入った為か舞台全体の出来は緊張感が足りず残念であった。 ビーストはロスで同役を演じた事のあるジェームズ・バーバー。 大柄な体格の役者で力強い歌声が印象に残った。 トニー・ブラクストンは演技力には欠けるものの存在感があり、容姿は美しくまさにビューティーそのものであった。 ベルの衣装やかつらの幾つかは彼女のためにデザインが変えられておりとても新鮮に感じた。   

 そして今回の舞台では彼女のために新たなミュージカル・ナンバーが加えられていた。 曲名は "A Change In Me" 「チェンジ・イン・ミー」。 第二幕の後半にベルがモリースを森から助けだし、村へ戻ってきて井戸の所で二人が会話を交す時にベルが私の野獣や物事に対する見方が変わったのだとこのナンバーを歌う。 どことなく映画『ボディー・ガード』の主題歌でホイットニー・ヒューストンが歌う "I Will Always Love You" に似たメロディー。 

 作曲はアラン・メンケンだという事は確かなのだが、作詞についてはプレイ・ビルにクレジットされていないため明らかではない。 ティム・ライスは現在ディズニーの最新作ミュージカル『エラボレイト・ライブズ』(アイーダ)のトライアウト公演の準備で忙しいはずで、アラン・メンケンが詞も書いたと考えるのが有力であろう。 この曲を歌うブラクストンの歌唱力は見事であるがその反面、彼女自身が役者でないためかどうしてもコンサートのようになってしまう。 とは言えベル役のソロは一幕で歌われる "Home" 「ホーム」以外には無く、以前からもう一曲あってもよいのではないかと思っていたので今回の試しには非常に好感をもてた。 またオリジナルの舞台を変える事を好まないディズニーが今回のような大きなチェンジに OK をだしたのには驚いた。 

 ヴァネッサ・ウイリアムズが『蜘蛛女のキス』に出演した時と同じように『美女と野獣』の客層にも幅が出たのではないかと思われる。 さてこの新曲が他の『美女と野獣』のカンパニーに挿入されるかは疑問だが、聞きやすく良い曲なので是非他のベル役者達が歌うのも聞いてみたい。

 

Back To N.Y. Theatre Index